2018年のおすすめ本
2018年に読んだ本の中で、特におすすめしたいものを紹介します。紹介する順番は適当です。
哲学・倫理学・美学
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Glenn Parsons, The Philosophy of Design
著者は環境美学研究で有名なGlenn Parsonsという美学者。デザインの分析美学的研究について調べたいと思い、一読したところ大変勉強になった。要再読。
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Timothy Williamson, Doing Philosophy
Doing Philosophy: From Common Curiosity to Logical Reasoning
- 作者: Timothy Williamson
- 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr
- 発売日: 2018/11/01
- メディア: ハードカバー
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認識論の研究で有名なWilliamsonの新刊。哲学の入門書だが、ところどころ彼の哲学観がにじみ出ていて面白い。
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Thaddeus Metz, Meaning in Life
Meaning in Life: An Analytic Study
- 作者: Thaddeus Metz
- 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr
- 発売日: 2016/01/30
- メディア: ペーパーバック
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人生の意味についての分析哲学的研究の到達点。すでに色々なところで紹介・批判されており、腰を据えて読んでみたらかなりの時間を要した。
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David Carrier, The Aesthetics of Comics
コミックの分析哲学的研究の代表作。ページ数はそれほどでもないが、情報量は非常に多い。ここからはじめるコミックの哲学という位置づけ。
- 松永伸司『ビデオゲームの美学』
松永さんの本がついに発売されたということで一気読み。評判に違わず優れた内容の本だった。ビデオゲーム研究や(分析)美学研究に関心のある人は、今後必読の書になるだろう。
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ネルソン・グッドマン『芸術の言語』
- 作者: ネルソン・グッドマン,Nelson Goodman,戸澤義夫,松永伸司
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
- 発売日: 2017/02/22
- メディア: 単行本
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昨年に出たグッドマンの古典の翻訳。松永本の副読本として。ところどころ難解な箇所はあるが、繰り返し読むべき古典の一つだと思う。
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スティーヴン・マンフォード、ラニ・リル・アンユム『哲学がわかる 因果性』
哲学がわかる 因果性 (A VERY SHORT INTRODUCTION)
- 作者: スティーヴン・マンフォード,ラニ・リル・アンユム,塩野直之,谷川卓
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2017/12/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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昨年の暮れに出たVSIの翻訳。某大学の講義でも教科書として使用した。講義用としては少し物足りないが、中級入門書として読むには最適かと。
- 千葉雅也『意味がない無意味』
千葉さんからお送りいただき一気に読んだ。さまざまな思考のヒントをいただいた。「意味がない無意味――あるいは自明性の過剰」は千葉さんの思考の軌跡をまとめたものになっており、彼の書き物への導きにもなっている。
- ノエル・キャロル『批評について』
昨年の暮れに出た翻訳。キャロルは本当に凄い。批評にかかわるすべての人は(彼の議論に賛成するにせよ反対するにせよ)絶対に読んだ方が良い。
- 森村進『幸福とは何か』
個人的には今年のベスト3に入る本。巷では評価が分かれているが、日本語でこの水準の入門書が読めるようになったことをまずは積極的に評価したい。
- 岡本裕一朗『人工知能に哲学を教えたら』
哲学の観点から人工知能の問題を手際よく整理した入門書。シンギュラリティ問題に過剰反応している人にこそ読んでほしい。
- デイヴィッド・ヒューム『人間知性研究』
やっと出た『人間知性研究』の新訳。ネットではあまり話題になっていないようだが、既存の訳書で漏れていた部分がきちんと収録されているのでヒュームに関心のある人は買った方が良い。中才先生の解説も親切。
法学
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中野次雄(編)『判例とその読み方』
- 作者: 佐藤文哉,宍戸達徳,本吉邦夫,篠田省二,中野次雄
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2009/04/01
- メディア: 単行本
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初学者が陥りがちな判例の読み方についてわかりやすく書かれた本。判例は勝手に解釈してよいものではない。中級の法学入門にもなる。
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刑法を基礎から勉強したくて読んだ本。こういう本は熟読に向いておらず、ざっくり全体を把握するのが良さそうだ。次に何を読むかは考え中。
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ナイジェル・ウォーバートン『「表現の自由」入門』
ウォーバートンによる表現の自由をめぐる議論の紹介。多様な論点が整理されていてすぐに読める。
統計
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久保拓弥『データ解析のための統計モデリング入門』
データ解析のための統計モデリング入門――一般化線形モデル・階層ベイズモデル・MCMC (確率と情報の科学)
- 作者: 久保拓弥
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/05/19
- メディア: 単行本
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批評
- 『ユリイカ』2018年7月号 特集=バーチャルYouTuber
バーチャルYouTuber元年ということで。個人的には、届木ウカのエッセイが非常に優れていると思った。2018年12月現在、バーチャルYouTuber(バーチャルLiver)の総数は6000を超えたらしい。来年はどうなることやら。
- 新野安(編)『〈エロマンガの読み方〉がわかる本』
booth.pm 今年の夏に公刊された同人誌。「エロマンガの読み方」だけでなく、マンガの読み方がわかる本にもなっている。稀見さんのインタビューも必読。